なからなLife

geekに憧れと敬意を抱きながら、SE、ITコンサル、商品企画、事業企画、管理会計、総務・情シス、再び受託でDB屋さんと流浪する人のブログです。

「ザ・チェンジ 人と職場がガラリと変わる12週間プログラム」


昼飯と通勤途中の時間を使って2日で読了。最近、読書のペース速いなあ。
で、今回読んでいた本は、いわゆる「死んでる組織」の復活劇を、ストーリー仕立てにする中で、著者の仕事上のプログラムを紹介した本です。

ザ・チェンジ! ~人と職場がガラリと変わる12週間プログラム~

ザ・チェンジ! ~人と職場がガラリと変わる12週間プログラム~




小説形式である一方、変に回りくどい脚色とかないので、「ザ・ゴール」シリーズよりも読みやすいですね。


前職ではITコンサルという業種でしたが、組織文化改革的な色を強く出している会社でもあったので、このストーリ&意識改革メソッドは「共感できる&一度は見聞きしたことある内容でした。逆にいうと、私個人にとっては「目新しさもない」ということになってしまうわけですが、人に勧めるには非常にヨイなという印象です。


というわけで、あらたな気づきというのは少ないわけで、以下の個人的なメモは、かなり少なめです。

気になったフレーズ&感想などなど

「はじめに」より


今こそ、北風から太陽に選手交代すべきタイミングなのです。
太陽とは、ココロの豊かさや人と人のふれあいを追及する新世代のマネジメントです。
顧客からお金を奪う代わりに、顧客に喜びと幸せを分け与え、機会やコンピューターに振り回される代わりに、人間が主役に返り咲くマネジメントです。


僕の大好きなピープル・ウェアにも通じる思想だと思いますが、経営手法を北風と太陽に喩えたのはインパクトがありました。より厳しい条件を与えつづけても、決して目的は満たされないのに、北風のように冷たく厳しい風を従業員に送りつづけている昨今の経営手法に対する、やわらかい表現ながら非常に痛烈な批判だと思います。


「第1章 キツネの自慢、エビの心配」より


ところで、私がクライアントのお話を聞くときに、意識的に注意を払っている点が1つあります。それは「何が隠されているのか?」


主人公(著者)が、経営の傾きかけているクライアント企業に初めて出向き、説明を受ける中で、業績や顧客の評価の低迷に気を取られて話が偏っているところに、「離職率やメンタルヘルスの問題は?」と問われて、クライアントが急にしどろもどろになってしまう、というシナリオの後に出てくる一節です。


問題の本質は、見えているたくさんのことによってむしろ隠れている/隠されているものだってこと。逃げの姿勢こそが、そのサイン。
個人の問題に転換して言えば「自重はダークサイド」なわけで、表に出して行動することを自重してしまうような何かは、やっぱり自分の欠点であり弱みであり、成長を妨げる根本原因であったりするわけです。組織レベルだけの問題じゃない。

「第2章 会議でわかる組織のカシコさ」より

組織のIQ

レベル 組織のIQの要素(思考の視点の高さと広さ)
第1レベル(思考停止) ほとんど思考停止。具体的な作業指示があれば進められるが、自分自身で新しい方法を見つけながら問題解決することは、ほとんど期待できない。自分で考えようとする前に、すぐに誰かに答えを提示してもらえることを期待する。
第2レベル(ルール主義) すでに組織に与えられているルールやマニュアルを頼りに問題解決をするが、前提条件が異なることや、記載・言及されていないこと、未経験の活動領域については、ほとんど問題解決できない。
第3レベル(戦術志向) 具体的な目標が与えられれば、ルールやマニュアル、今までに経験したことがある範囲で、自分たちで問題解決を図っている。ただし、限定された範囲の志向にとどまり、自ら課題形成することは苦手。抽象的な原理原則論を、具体的な戦術や行動計画に展開することは苦手。
第4レベル(戦略志向) 事業や企業の中長期の目標に向けて、それを達成するために、未経験の情報を用いて新しい戦略を生み出すことができる。抽象的な原理原則論を具体的な戦術や行動計画に展開することができる。
第5レベル(将来展望) 社会的なトレンドや技術動向、政治経済の状況を幅広くとらえ、将来を予見したうえで、事業や企業が進むべき方向性と目標とする到達水準を設定することができる。
第6レベル(理念確立) 社会的なトレンドや技術動向、政治経済の状況を幅広くとらえ、将来を予見したうえで、事業や企業の枠組みを超えた理念や哲学を打ち立てることができる。


組織のEQ

レベル 組織のEQの要素(交流の広さや情報源の利用範囲)
第1レベル(個人主義) 問題が起こると、基本的には個人で抱え込み、誰にも相談しない。また、新しい情報に触れることなく、自分自身が経験した範囲でのみ解決しようとする。書物や外部情報などの2次情報の利用は行わない。基本低に、解決策を導き出せる可能性は低い。
第2レベル(秘密主義) 問題が起こると、まずは個人で解決しようと図るが、次に上司や先輩など、日頃から直接的に仕事の指導をしてもらっている人に限定して相談する。あるいは、書物や外部情報など2次情報の利用によって、1人で解決しようと努力する。基本的に、解決策は、過去の経験の範囲で見つけようとし、他人に相談することを恥と感じる。
第3レベル(日常チーム型) 問題が起こると、日頃から一緒に仕事をしていて、プライベートな会話もできる仲間を募り、一緒に解決を図ろうと相談する。相談相手がすでに持っている経験や知識を生かして、問題の解決策を見つけることができる。
第4レベル(タスクフォー型) 問題が起こると、そのテーマに合った適任者を社内から選び出し、その臨時発生的な対話を通じて、新しいアイデアを誘発していく。また、書物や外部情報など2次情報の利用も行い、社外の参考情報をヒントに新しい解決策を作り出すことができる。
第5レベル(イノベーション型) 問題が起こると、従来の自社内の成功体験をいったん否定して、新しい視点や発送から仮説を提示できる。また、社外の人脈をおおいに利用して、各分野での第一人者や他業界の企業などと、コラボレーションを通じて、次世代の技術やメソッドを生み出そうとする。
第6レベル(価値観想像型) 問題が起こると、その問題を発生させている業界や業務機能の前提を伺い、社改定な視点社会的な視点から新しい世界観を形成しようとする。問題解決の検討を通じて、次世代の事業を切り開くことができる。

組織診断のレベル表です。(写経するのツラかった。)
個人の行動にも、ほぼそのまま当てはまりますね。「そういう人たちの集合]という意味での組織です。


微妙と感じるところあれども、おおむね同意。よく整理されているな、という感じです。
特にレベル1,2,3は、自分自身でも「痛っ」っていう部分がありますし。
何か新しい集団に飛び込むことがあった際に、そこの空気を掴むのに非常に便利なレベルチェッカーですね。


「第3章 反乱軍の戦闘開始」より


マネジメントの採点基準

レベル マネジメントの水準(概要)
レベルD 問題意識が低く、ここ1〜2年の間に主要な業務改善やマネジメント面での改善がほとんど行われていない水準。
レベルC 全般的に業務が未整備で、個人依存や部門におけるバラツキが大きい水準。マネジメントに関しても、個人に寄る考え方や方法の差が大きい。
レベルB 全般的に業務の標準化・仕組み化が一通り進んで、問題の再発防止は対処できる水準。全社方針に沿って、社内ノマネジメントが行われている。
レベルA 全般的に業務が高い水準で整備され、問題の未然防止ができている。外部情報との比較を踏まえた目標設定が行われ、それについてマネジメントのPDCAサイクルが回っている。将来ビジョン、全社方針、戦略、業務活動のすべてに整合が取れている。
レベルAA 上記の水準を満たした上で、先進的な取り込みにより、明らかに競争優位性が見られる水準。
レベルAAA 経営のあらゆる領域で、世界最高レベルの水準

これも、上のものと同じなのでコメ省略。


「第4章 実録 『職場変革12週間プログラム』」より


ルールとは、それにかかわる人たちが、みんなで話し合って決めるべきものですから。


研修プログラムの初日、この研修の中での固有のルールを、「参加者みんなで」決めましょう、というシナリオの中で出てくる一節です。


前職では、会議術の1つとして世間的にも流行っている「ファシリテーション」を昔から積極的に取り入れていました。会議だけでなく、プロジェクトチームの活動すべてに適用範囲を広げていました。
そこで、ここにあげた一節ととても関連のある「グラウンド・ルール」というものを利用していました。


プロジェクト・チーム固有のルールを、プロジェクト・チーム発足の最初の段階で、みんなで決めて守りましょう、というものです。


ルールを決める人がいて、ルールはそこから与えられる/押し付けられるもの、というカルチャーの中で育ってしまうと、なかなかこの「グラウンド・ルール」の考え方になじめないようです。


「第4章 実録 『職場変革12週間プログラム』」より


「もしかすると皆さんの中には、今やっていることをくだらないと思っていた人もいるかもしれません。でも、これは皆さんの上司力を上げるトレーニングでもあるんですよ。」
―あれ?みんな急に真剣な顔になっちゃって、どうしたの?


選抜されて研修に参加しているものの、「行けといわれたから」感が丸出しの研修初日に、「上司力」というキーワードが出たとたんに、態度が豹変した、というシーンです。
企業研修は、その多くが「xxには必要だろから参加して来い」という形で提供され、受ける側は「つまらないもの」「行かされるもの」と捉えられているようで、まさにそんな感じの描写です。
が、自分の利害と一致する何か引っかかるものが見つかったとたん、「自分のこと」として捉えられるようになり、その効果もまったく異なってきます。


このへんについては、コンプラ屋さんことmiryu氏のエントリ

(個人の)メリットを強調

何か(特に面倒くさいこと)をお願いされる時には、「で、それやると何が嬉しいのよ、メリットは?」と聞きたくなるものですよ。
新入社員にセキュリティ教育する時に気を付けたこと5つ + 1 - コンプラやさん。

にも通じるものがありますね。


「第4章 実録 『職場変革12週間プログラム』」より


つまり、他人を変えようとか、職場を変えようと思うのなら、まず先に自分自身を変えることに成功しないと。それができる人だから、周囲の人も協力しよう、この人について行こうと思うんでしょ?それがチェンジリーダーの条件です。


もう、そのまんまですね。
これは、自分自身、かなり思うところありまして、自戒の念でいっぱいです。


「第4章 実録 『職場変革12週間プログラム』」より


どのような組織でも必ず、大きな変革が起こるときは影響力を発揮し変化をしかけていく5%のチェンジリーダーと、その他大勢の95%に分かれます。チェンジリーダーが組織の5%以上の力を発揮することができれば、変化は確実に始まります。しかし、チェンジリーダーの人数が5%以上いても5%以上の力を発揮することがなければ、抵抗勢力に負けてしまい変化は起きません。

この数字の根拠はわかりませんが、なんか納得できますね。
1人で戦っても変えられない。
少ないうちは、影響力も小さい。
そこで、「半径5m」の吉岡メソッド発動ですね。


「第4章 実録 『職場変革12週間プログラム』」より


ケースメソッド(他社の事例を用いた議論)は、組織マネジメントやリーダーシップの原理原則を学ぶのに適した方法です。いきなり自社の問題を話し合おうとすると、どうしても聖域を設けたり言い訳に走ったりして、まともな議論にならないことがあります。ところが、ヨソの企業のことなら遠慮なくズバズバと本質に切り込んでいけるので、物事の核心が見えやすいのです。


これは大いに活用してみたいメソッドですね。
自分のことを否定するのはなかなかできないけど、他人のことだと思っていつものノリで上から目線で講釈タレてたら、実は自分たちのことだった、みたいなの。すげえ気持ちよさそうwww

最後に

ビジネス小説は、ほかのジャンルの小説をほとんど読まない私にとっても、非常にとっつきやすいので好きですね。「ザ・ゴール」シリーズも全部持ってるし。


この本は、おそらくこの著者が提供している組織改革プログラムそのものを疑似体験できる仕組みになっていると思います。
そして、このプログラムに参加したつもりになって、自分のおかれている環境について思いをめぐらせて見ると、何に取り組むべきか、ヒントが得られるのではないでしょうか。
一読の価値はあると思います。3時間くらいで読める手軽さってのもオススメです。