売上と収入はイコールではない。あるいは、docomoがi-modeを手放せない理由
企業が売上を立てた所で、その売上、そのお金をどうやって回収するの、どうやって手元に入ってくるの、って話がメインです。
が、書いてる途中で、docomoがi-modeにこだわってる話とつながってるなと思いまして。
決済手段あれこれ
モノやサービスの売買が発生すれば、その対価の支払いが発生します。
B2Bだと、会社Aから会社Bの振込が大半でしょう。もちろん、手形やら小切手やら現金やらあるけど、そういうのば簿記のお勉強で。
B2Cの場合は、この入金経路が非常に多様になります。
自分自身が客の側として利用しているサービスを思い浮かべれば、どんな種類の支払い手段が提供されていたか、たくさん思いつくはずです。
- 現金手渡し
- 銀行振込(振込確認後発送、の通販とかありますよね)
- 代引き
- クレカ
- 電子マネー
- 口座引落(公共料金等の継続契約型のサービスに多用されてます)
- デビットカード
- ポイント決済(自社発行ならともかく、Tポイントのような提携他社発行のポイントで決済とかあるこんな世の中)
ざっとこんな感じかな。
決済手段と「手数料」
消費者側からして、購入した商品/サービスの対価として提示されている金額の通りに支払うもの(A)、そうでないもの(B)があります。
企業の側からして、提供した商品/サービスの対価として提示している金額の通りに手元に収入が残るもの(C)、そうでないもの(D)があります。
(A) 銀行振込、クレカ、電子マネー、口座引き落とし、デビットカード、現金手渡し
(B)代引き(代引き手数料は大抵消費者側が負担)、ポイント決済(これは微妙)、銀行振込*1
(C)銀行振込、代引き、現金手渡し
(D)クレカ、電子マネー、口座引落、デビットカード、ポイント決済
世の中、他人に動いてもらえば「手数料」というものが発生します。
それを、消費者側が負担するか、企業側が負担するか、かならずどちらかになります。
特に
「(D)クレカ、電子マネー、口座引落、デビットカード、ポイント決済」
については、消費者が支払うお金を回収し、企業側に渡すという業務を請け負う分の手数料を、企業側が負う仕組みですので、タイトルの通り売上と同額が収入になるわけではないです。
なので、「現金特価=現金払いにおける割引後の金額>クレカ払いによる、手数料差し引き後の金額」というセール方法が存在するわけです。
回収の外部委託
企業側にとって、誰かに頼んでお金を回収してもらうのが、「(D)クレカ、電子マネー、口座引落、デビットカード、ポイント決済」なわけですが、これにも幾つか種類があります。
(あ)回収代行
(い)債権譲渡
「(あ)回収代行」は、読んで字の如く、回収を代行してもらうこと。回収を依頼する件数や金額に応じて、手数料が発生します。
「(い)債権譲渡」は、回収してもらうその売上債権そのものを、回収業者に買い取ってもらうことです。譲渡する債権の件数や金額に応じて、手数料が発生します。
債権が手元にあるか、譲渡するか。
回収代行の場合、回収してもらった結果としてのお金を、手数料を引いたい状態で回収代行業者から入金してもらいます。
一方、債権を譲渡する場合、その譲渡売買の時点で譲渡側企業に「債権総額−手数料」お金が入ってきます。
なぜ、手数料を払ってまで、間に業者を挟むのか。
対消費者、という観点では、いろいろな決済手段を提供していたほうが、購買までのハードルが低いということがあげられるでしょう。
さすがに、それで他社との差別化を図れるほどの要因になるかというと厳しいですけど、私自身は、持っている電子マネーが使える店を優先してランチに行ったりしますしね。
企業側にとっては、それ以上に、債権管理がラクになることのメリットのほうが大きいです。
特に、債権譲渡の場合、実際に各消費者からの入金を待たずに、債権の譲渡時点で企業側の手元にお金が入るので、キャッシュフロー的にラクになります。ここ超重要です。
回収業者に渡す債権も、さすがに不払いを起こすような消費者の債権は引き取ってもらえませんが、そうなるまでのステータス管理をお任せできます。
こうした売上債権管理を、手数料負担を一切かからないようにするとなると、現金、口座振込くらいしか手段がない上に、そうして入金されてくるものを、ひたすらチェックしては債権帳簿と突き合わせる業務に追われます。
不払いを起こす消費者に対する督促(メール、電話、手紙、訪問)や、最終手段としての告訴、差し押さえなども、全部自前でやらなくてはいけないわけです。
どっちがコスト的にラクか、というと、専門業者にお任せしたほうがよいわけです。
で、回収業者側も、不払いおこすような変な客ばかりでなければ、売上債権を割り引いた状態で引き取って、額面通りに現金化できるわけなので、それはそれでメリットがあります。
こういう関係でもって、企業と消費者の間に、もう1段階、回収業者が存在してるわけです。
i-modeの「課金プラットフォーム」としてのウマさ
docomoがi-modeにこだわるのは、この回収業者としてのポジションが美味しくて、やめられないんだよ、って話。
純粋な携帯電話ビジネスで構築されている、一般的な回収フロー
企業−回収業者−消費者
から、i-modeによって、コンテンツ事業者の課金コンテンツの回収代行までを請け負うプラットフォーマーとして位置づけることによって
企業−docomo−回収業者−消費者
という構図を作ってるわけで。
コンテンツ事業者が個別に回収業者と契約を結んで回収依頼をするのも大変ですし、何より、この手数料は回収代行委託/譲渡の金額規模や不良率、取引継続期間などで決まってくるので、小規模事業者から見れば割高な手数料率を払うことになります。
そこで、膨大な金額の取引実績と信用度を持つdocomoの回収フローに載せてあげることで、直接契約よりも割安な手数料での回収代行を請け負うというのが、docomoがコンテンツ事業者に提供しているバリューなわけです。
docomoからすれば、実回収は既存の回収業者がやるし、不良債権はコンテンツ事業者に突き返せばいいし、債権を右から左に流すだけでお金が生まれるってオイシイ、って感じです。
Softbankが、まっさきにiPhoneに飛びついたのは、もちろんiPhone自体のプロダクトの魅力と、iPhoneがまだまだ未完成な*2時点での将来像に対する経営者の感度の良さもあるわけですが、i-modeほどオイシイ課金プラットフォームビジネスに成長していなかったのも一因でしょう。
ごめんなさい。ポイント決済の処理(Tポイント何がオイシイの的な話)は、不勉強につきよくわかってないので、スルーしました。
教えてえろい人。