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なからなLife

geekに憧れと敬意を抱きながら、SE、ITコンサル、商品企画、事業企画、管理会計、総務・情シス、再び受託でDB屋さんと流浪する人のブログです。

ATカーニーのコンサルが書いた「ITシステムの罠31」を読んで、「るろうに剣心」を思い起こすなど

プロジェクト 情シス 書評メモ 雑記

システムを導入をする上でのハマりポイントを整理

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本


読みやすさを重視してか、タイトル通り31に分けて整理して言及してくれています。
もちろん、よく言われている問題もありますし、他所ではあんまり見かけないけど良くそこまで言った、って思うものもあります。


これの1つ1つがものすごく突き刺さります。痛いくらいに刺さります。


個人的には「るろうに剣心の安慈vs左之助の対戦」の壮絶な殴り合いのシーンが脳内を駆け巡りました。安慈側と左之助側のどちらとして痛みを感じることになるか、ってのもあります。(わかりにくい



それぞれの「罠」に対する対処法にも当然言及されていますが、「言うは易し」で、その1つ1つは大変なものです。ただ、そもそもどんな状況にも効く解決策なんてありませんから、どうやるかは自分自身の問題ですし、「そういう対処を考えないと罠にハマるよ」ってことを考える材料としては十分な内容です。

「現行システムで問題なく経営しているのに、大金を投じてシステムを更改する」の愚

本書の「はじめに」で登場するフレーズですが、現職コンサルでも、元コンサルでも、事業会社側の人でも、この意識が弱い人は結構います。


ド偏見ですけどERPパッケージいじってた人に多い印象。
日経コンピュータあたりでのアゲてサゲてのサイクルが10年以上前に終わってる話だと思っていたんですが、未だに流行当時のマーケティング資料を諳んじるかのごとく「大正義ERP!」みたいな話をする方もまだまだいまして。


何のために必要なのか、必要なのはソレなのか、今そうする必要があるのか、っていう、システムを導入する/発注することを決める以前のところがおろそかだと、「成功の定義」すら曖昧なままになり、その先のフェーズで、誰がどんなに頑張っても報われないプロジェクトに陥る可能性が高まります。

受託側の人にも読んで欲しい

「この本は、経営層、システム部門、ユーザー部門に向けて書いたものです」
と冒頭から宣言されてしまいますが、受託側の人にもぜひ読んでほしいです。


なぜなら、「発注側の課題意識がどこにあるか」がわかるからです。
そして、「受託側の意識とどうずれているか」「どういったところに、受託側からの支援ビジネスの余地があるか」を考えるための材料となるはずです。


ただ、そういう発注者側の事情を知っていようが知るまいが、受託側は嘘でもいいからニーズを認識させて発注させないと食べていけない面をもっているわけで、下手に開眼するとその先は苦悩の日々に突入するかもしれませんが、そこは自己責任で。



あと、この際なので言ってしまうと、技術の話はほとんど出てきません。
つまるところ、技術的要素って、発注側が抱える問題の解決に対して、その程度のインパクトしかないんです。
受託開発事業がメインで「技術で差別化」とか謳っているところは、そこのところよろしくおねがいします。


「絶対失敗しないために」っていう煽り文句

ここまで大絶賛してきた本書ですが、「絶対」という単語が、ものすごく引っかかるんです。


「絶対」なんて目指してシステム作ってたら色んな所で保険かける分でコストが跳ね上がってしまうって、本書内でも言及してるし、それを特に社内IT部門のカルチャーとして批判的に書いているのに、著者がタイトルで「絶対」とか使っちゃっていいの?っていう。


本を手にとってもらうためにインパクトが必要ってのもあるだろけど、そもそも論として、この本はサブタイトルいらないと思うんだよな。メインタイトルだけで十分伝わるし。


コンサルも受託ビジネスだし、高いフィーをもらっているので、「失敗は許されない」って考え方が強いんだろうと思います。。


個人的には、「絶対失敗しない、なんて言ってたら、萎縮して何もしなくなってしまうよな」って考え方の人なので、「失敗も想定に入れる」「何をしたら失敗しやすいか知っておく」「失敗しても小さな傷で済むようにする」っていうアプローチを取りたいと思っています。


えらそうにいうのもなんだけど

「罠」の原因って、基本的には「人」、それも「人の善意」なんですよね。

みんな、善かれと思ってやってる。各々の正義にもとづいて動いてる。


「失敗」って、各自の正義に基いた行動の衝突の結果、ある一方の立場から見て、己の正義の通りにならなかった結果を表してる言葉だと思うんです。


「あの時代(幕末の動乱期)は、これからの日本を良くしようということについての、己が信じる正義と正義のぶつかり合いだった」っていう表現が何度か出てくるわけですが、まさにアレ。


そして、「勝ったからといって、それが正義なのかどうかはわからない」。


ただ一方的に「アレは正しい、コレは間違い」などと押し付けたところで、なんの解決にもならないのは、この本がいう「罠」についても同じだと思います。


著者の方たちは百戦錬磨のコンサルタントなわけですので、そんなこと百も承知で書いていると思います。



おまけ

問。罠や失敗の原因を「常勝不敗の最強の剣術」的な何かで解決しようとしたら、どうなるでしょう。

答。歪みを生む。


くれぐれも、不殺(ころさず)でお願いします。
システム導入プロジェクトは、戦うべき相手は「人」ではなくて「課題」。
「人」はむしろ手を取り合うべき相手です。


こちらの業界では「銀の弾丸はない」って、素晴らしい言葉が定着していますから、「常勝不敗の最強の剣術」的な何かを頼ろうとする人も少ないかと思いますが。




るろうに剣心」を読み返した直後の影響で、なんともむちゃくちゃな書評エントリになってしまいました。

本書「ITシステムの罠31」には、マンガの話なんぞ1ミリも出てこない、とても硬派で実用的な書籍です。


それではおあとがよろしいようで。



ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本

ITシステムの罠31 システム導入・運用で絶対に失敗しないための本