Powerpoint脳、Word脳、Excel脳
ドキュメントを作るときに「どのソフトを選択するか」という観点から見た、思考のクセを簡単に識別してみましょう。
No | 種別 | 特徴 |
1 | Powerpoint脳(以下、パワポ脳) | 引き算の思考。余計なものをそぎ落として、本当に必要なことに絞り込んでいくタイプ。 |
2 | Word脳 | 足し算の思考。必要そうなものはとにかく書き足していくタイプ。 |
3 | Excel脳 | 一覧思考。ヌケモレなく表形式で一覧したいタイプ。 |
x | Excel方眼紙脳 | 爆発しろ(本来的な意味で) |
なんという独断と偏見w
とにかく、性格診断の名を借りて、それぞれのツールの特性が引き出す思考について触れてみたいと思います。
1.パワポ脳
このタイプは一般的に、「頭いい」と思われやすいです。お得ですね。
資料だけでなく、発言についても、ポイントを突いている、流れ、リズムがある、などの特徴があるためです。
もうちょっと解説してみましょう。
まず、Powerpointってヤツは、プレゼンテーションの為のツールとして世に送り出されています。
プレゼンテーションの目的は、それによって、相手に事情を理解してもらい、その結果として、相手に変化(何らかのアクション)を起こしてもらうことです。
この「プレゼンの目的」を意識すると、以下のことを強烈に意識することになります。
- パワポで作る資料全体の目的は何か。
- 全体の目的を達成するために「本当に必要な」情報は何か。そぎ落としてよい情報は何か。
- 全体の目的を達成するために「本当に必要な」情報を、どのような展開で流し、どのような表現を用いれば、相手に理解してもらいやすいか
パワーポイントというのは、基本的なフォントサイズがかなり大きめに設定されています。
それはプレゼンテーションというものが、複数人を前に投射して実施することを想定しているからでもあります。
そのままのサイズで、ということは私自身もやりませんが、でも、Wordのデフォルトサイズまで落とすことは個人的にはNGです。そんなサイズで投射されても、読めやしないしないから。*1
読めないでもかまわない程度の情報なら、そこに書いてある必要がないから。
そういった「狭いキャンバスに大きめの文字で表現しなくてはいけない」という制約も含んだ条件の中で、ファイル単位で、ページ構成で、各ページの中で、「一番伝えたいこと」と「一番伝えたいことを伝えるために必要な、最少量で最大効率の情報、表現」を考え抜くことになります。
そうすると、キーメッセージ+補足文章・補足図解(絵、表、グラフ)という構成に落ち着いて、いわゆる「パワポらしいパワポ資料」になるわけです。
そうやって、シンプルに、効果的に伝えるための考え方「引き算思考」が養われていくわけです。
それは、資料だけでなく、会話のレベルにも現れてきます。
話が長い/文章が多い、話が発散する、などと言われがちな人は、プレゼンを意識してパワポで一回まとめてみるとよいかもしれません。
そもそもパワポでの表現自体が苦手な人には、この手の本がお勧めです。*2
2.Word脳
このタイプは、「話が長い」とか、「言葉が湧き出てくる」と言われやすいタイプです。
Wordというのは、いうまでもなく、Wordプロセッサーです。
ワープロの基本機能は、「文章」の作成、校正、編集、印刷にあります。とくに、その前身はタイプライターですから、とにかく文章を「書く」ことが中心です。
出発点としては「効率よく書き足していくこと」に重きを置いたヤツなのです。
フォントサイズは「読み進めやすい」程度のデフォルト値で、付随機能としては、段落構成、見出し、目次周りの管理機能が充実しています。
まちがってもパワポは目次の自動構成なんてやってくれませんよね。
こういう環境下では、書き進めていくための脳が活性化されて(科学的にどうか知らないけど)、文章が流れるように出てくることを促進する効果があるようです。こうして生み出された文章は、リズム感はあるが、ボリュームも多いものであったりします。
悪い言い方をすると、ダラダラ書いてある文章、に向かっていきます。
文章の論理性、構造自体は書き手の論理思考力と表現力に依存しますが、共通するのは、「長い」ということです。
長いこと自体が良いか悪いかは別として、「長い」のです。
ブログなんかもそうですね。
長くても論理的に書くことで、読みやすさは増します。
長くても図解を効果的に使うことで、読みやすさは増します。
文体、リズム、内容によって、いくらでも評価は変わるわけで、長いこと自体が悪ではないです。
脈絡なく、まとまりなく長いのが悪なのです。
長い、ということだけで、わかりやすさという観点ではパワポより不利になっているので、よいドキュメントという評価へのハードルが高くなっているだけです。
また、わかりやすいことがすべてではない、という文章も、Wordで書かれることが多いですね。規約の類なんかも該当します。とにかく、書いてあることが大事、ってやつ。パワーポイントに書こうとして、見せ方気にして情報が欠落しては元も子もない情報を取り扱うわけですから、やはりWordが向いていることになります。
3.Excel脳
このタイプは、「細かい」「網羅性が気になる」タイプが多いです。
Excelは、本来、表計算ソフトです。表計算ソフトなんです。大事なことで2度言いました。
しかし、恐ろしく自由度が高く、なんでもできてしまうツールです。
計算式を伴わない表形式での表現も、当然のように簡単です。
Excelの基本機能である行列挿入は、表形式表現の推敲における必須機能ですね。
この機能が如何なくパワーを発揮するのが、網羅性のチェックのときです。
関連性を評価しなければいけない項目を縦横に並べ、その交差ポイントをチェックしていくことで、
ヌケモレを発見するツールとして活用できます。
だらだら順番に文章で書くのは論外として、ロジカルシンキングの王道ツールであるロジックツリーよりも、網羅性の担保には威力を発揮します。
私はこれをテストケースの網羅性を担保するのに応用している組織に所属していました。
そこで使われているテストケースは、一般的な形式
No | 機能カテゴリ | 前提条件 | 操作 | 期待結果 | OK/NG | 試験実施日 |
で、「XXをする」が、何度も何度も出てくるようなヤツではなく、
実装/仕様上ありうる条件パターンと結果パターンを列挙して、存在しうる組み合わせをチェックリスト上で丸つけておく、という形でした。
いわゆる「直行表」や「デシジョンテーブル」のアレンジ版をイメージしてもらえばよいと思います。
ただし、Excelは計算やチェック作業には適していますが、文章記述や印刷には適していません。
いまだに、印刷時にセル内の文字が見切れるのを仕様として引きずっているMSは激しくdisられて然るべきだと思いますが、そもそも文章記述には不適切なツールです。
Excelの特徴を活かし、適切に使うことで、モレがちな細かなところを拾い上げるツールとして大活躍します。
計算にしても、チェック表にしても、細やかさと正確性、網羅性を担保する資料として生きてくるわけです。
4.Excel方眼紙脳
「爆発してください。ぼくの目の前に現れないでください。」といわれます。少なくとも私はそう思ってます。
- 一文追加するたびに行挿入
- 構成変えたくなって、インデント変更が必要になったら、列挿入、セル挿入
- ページ枠は自分でコントロール
- シートごとに印刷用のページ設定
- 前のページ(に相当するシート)の内容を参照しながら記述できない(シートをまたいだ分割表示はない)
とか、なにやってんの。
ほんとにもう、ぼくの目の届かないところで爆発していてください。
思考のクセはともかく、目的にあったツールを使おう
パワポが良くて、WordやExcelがダメだ、ということではありません。
目的に応じて、適切な手段を選びましょうよ、ということです。
パワポの場合、コミュニケーションツールとして捕らえておくと良いです。
誰かに何かを説明するには、パワポでキーメッセージベースの構成をとるべきでしょう。
小説、論文、仕様書のようなものは、Wordを使うべきでしょう。
必要な情報が漏れなく記載されるよう、言葉が湧き出るように脳を活性化させつつ、効率よく推敲すること。労力少なく、文章構成の管理を行うこと。簡単に目次をつけること。印刷時の体裁を簡単に整えられること。
これらは、Wordが得意とするところです。
仕様書なんかも、必要な情報がまとまってドカっと書いてあり、そこへのアクセス性は目次で担保されることが望まれるわけで、章と節を適切に設計しつつWordで書くのが望ましいと思います。印刷を考慮するならなおさらです。
表形式での管理、網羅性の検証を伴う資料の場合は、Excelが向いています。計算を伴う資料も向いてます。当然ですね。
でも、自由だからといってなんでもやってしまうと、それは「本来それ向けに提供されているツール」を使うよりも非効率な作業になります。
Excel方眼紙なんて、ほんといい例だと思います。Wordが自動化している作業の多くは、Excel仕様書では手作業を強いられます。
その労力、不毛ですね。何の価値も生み出してませんね。
適切な手段を選択して、最高の能率で最高のパフォーマンスを出せるように心がけていきましょう。