「自責社員と他責社員」は、マネジメント側にはびこる「他責感情」を咎める、自分に厳しい経営者からのメッセージだった。
「他人のせいにしない、自分の問題として考えて動く奴が伸びる」
言い尽くされた感のあるこの言葉、確かにその通りであるからこそ、多くの人によって語られてきたわけですが、聞かされている側として、ずっと違和感を持ち続けてました。
言っている本人が、部下に責任をなすりつけているだけだったりすることが往々にしてあったりするので。
この「自責社員と他責社員」という本は、まさにその点をエグルように突いてくる一冊でした。
「なぜ、あなたはうまくいっていないことにきづいているのに、改善しようとしないのですか?」と。
おそらく、それに対しては次のような答えが返ってくるはずです。
「それは上司の仕事であって、私の仕事ではない」
ここに見られるのは典型的な他責の思考です。全体を見るのが上司の仕事であるのは確かですが、少なくとも上司に対して改善を提案することはできるはずです。提案して上司が動かなかったとしても、他の人に相談するなり、みんなを集めて話し合うなり、いくらでもできることはあるはずです。
では、上司はどのように思っているのか回答を見てみましょう。
「自分の仕事だけすればそれでよいと思っている人が多くて、横のつながりがあまり見られないので、部下のレベルをあげたい。人を取り替えるのが手っ取り早いけれど、給料が安いので優秀な人材が残ってくれない」
一見、中間管理職の悲哀のようにも見えますが、ここに見られるのも他責の思考です。
部下を教育して育てるべき立場にある人が、部下が悪いと言っているのです。
P73より
部下側の他責に対して行動改善のための方法を提示するとともに、上司側のスタンスもバッサリと切る、このバランス感覚のよさ。
そして、それでも部下側が動かなくなる理由として「あきらめの支配」がはびこっていること、その原因は、社長以下経営陣にあることを、はっきりと示しています。
他にも、兎に角その責任は上へ上へと追求する姿勢が貫かれている文章をみることができます。
行動観察において、管理者がマネジメントを充分に行なっていないことが分かっても、その社員だけを責めることはできません。なぜならば、原因は会社の仕組みの欠如にあるかもしれないからです。
(P83)
この本は、経営者として経験豊富な著者の手によって、経営者層を主な読者層として想定して書かれた本。
「あなた」と書かれている部分は、すべて経営者や管理職を指しています。
と同時に、経営者である著者自身にも跳ね返ってくるような戒めが、新書という小さな本の中に多数ちりばめられています。
管理職以上のポジションについている人は必見の本であると同時に、そうしたポジションを目指す一般社員も目を通しておくべき本でしょう。
「部下が育たない?成長してねえのはオメーだよ」
と言われないために。
- 作者: 松本洋
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2012/09/11
- メディア: 新書
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