なからなLife

geekに憧れと敬意を抱きながら、SE、ITコンサル、商品企画、事業企画、管理会計、総務・情シス、再び受託でDB屋さんと流浪する人のブログです。

「稟議って何よ」って話。

社会人になってから10年近く、稟議書ってものを書いたことがなかった。

ガチです。


受託開発で客先出ずっぱりの兵隊SE/コンサルが、社内で何か物事を通すための稟議を書く機会って、なかったりするものですよ。

 

少なくとも私はそうだったんです。

 


受注するまでは「営業のシゴト」だったりしたので、営業活動の中で必要なことは全部営業マンがやってくれた。提案書は書くけど、契約の締結に至る諸条件について、自分の会社のOKをもらう細かなところは、営業マンがやってたんです。

 


その後、事業会社に移って、「自分の会社の為に、自分の会社のお金を使ったり、会社としてどこかと契約結ぶ」って機会が増えて、そこで初めて「稟議」ってプロセスを体験し、稟議書というものを初めて書きました。

 

 

だから、今でこそ管理部門の一員として、上がってくる稟議の管理や駄目出しなんかしてたりするけど、「知らない人は知らないよね、仕方ないよね」って観点も持ってたりします。

 


財務経理やら総務やら、管理部門一筋の人って、逆に、稟議というものが当たり前すぎて、変な稟議書上がってくると「ちゃんとやれ」っていう駄目出ししちゃうんですよね。

 


「ちゃんと、ってなんだよ」ってくらい、知らない人は知らないんですよ。知っててもめんどくさいだけの代物としか認識されていないんですよ。

 


管理方の視点にとらわれ過ぎると、稟議が必要のない世界や、必要だけど関わる必要がない世界、ってのは確実にあるのに、そこに気づけない。

 


だからこそ、「稟議って何よ」を一度整理しておこうと思いました。

 

 

 

稟議とは、「会社として、こういうことしてもいいですか?」というお伺いのこと。

もう少し具体的な例だと、

  • 「外部とこういった契約を結んでいいですか?」(契約稟議)
  • 「こういうものを購入していいですか?(=会社のお金使っていいですか?)」(購買稟議・調達稟議)

という内容になります。

 

ていうか、この二種類で8割占めると思います。

 

他には、「こういうルール作っていいですか」とかもあるんですけど、これに当てはまるのは就業規則の改訂とかだったりして、その多くは取締役会決議事項になってることが多いですから、稟議レベルでは意外と少ないです。

 

 

ポイントは「これからやりたいことについて、事前に確認すること」です。

 


稟議に不慣れな人がもっともやりがちな、

「XXを買うことにしたので、お金出してください」

は「稟議」じゃなくて「支払い依頼」です。

 


「おめーそれ買っていいなんて言ってねえよ。」って話です。

 


そして、

「稟議A(稟議承認番号-XXXXXX)に基いて、こういう条件で購入することになりました。つきましては、いついつまでに幾ら、どこどこへ支払いをお願いします」

っていうのが支払い依頼です。

 


そして、まともに運用できているところであれば、「稟議書」と「支払依頼書」が全く別の申請書として存在しています。

 

 

管理部門が強い会社だと、稟議ナシに支払い依頼を上げてくるような場合、その場で蹴っ飛ばします。比喩ナシに蹴っ飛ばすこともあります。

拒否通知も拒否理由説明もナシに破棄されて当たり前ってところもあります。

 

 

支払い依頼、つまり会社の財務経理部門を通す、ということをせずに支払いをするケースもあります。「立替経費精算」というやつです。

 


少額備品購入や移動・出張にかかる経費の場合、従業員が一時的に自腹を切って支払って、領収書をもって精算するパターンですね。

 

 

この場合もやはり、先に「稟議」ありきです。

 「稟議A(稟議承認番号-XXXXXX)に基いて、こういう条件で購入しました。費用は従業員自身で先に支払い、領収書はこの通りですので、同額の支給をお願いします。」

という形で精算します。

 

 

稟議承認の結果と照合できないような立替経費精算の内容については、お金出してもらえません。

 

 

まず会社がOKだして、それに従ってお金が動くような契約行為をして、それに基づく精算を後に行う。という時系列が大事です。

 

 

念のために、「会社がOKを出す」っていうのは、認否の対象となっている案件について、然るべき権限を持った人間が承認する、ってことです。

 

モノによっては、直属上司でもOKだし、モノによっては社長でもダメで、取締役会で決議しろ、ってものもありますね。

 

 

「稟議」と「稟議書」

「行為」と「記録」の違いです。似たような言葉ですが、使い分けましょう。

記録として残っているか否かの違いです。

 


比較的小さな企業や、大きくても非上場の会社でしか就業経験の無い人にありがちな発言として

 

「社長(または〇〇さん)が良いって言ってるんだからいいじゃん。いちいち稟議書とかめんどくせえし、お金の動きについては領収書があればいいんでしょ?」

 

ってのがあります。

 


正直言って、上場と無縁なら、それでもいいじゃないかって思ってます。

 

 

自身が上場企業でない、または、上場企業の子会社でなければ、その「稟議書」について監査する人はいません。*1

 

 

税務監査は極論として売上根拠、費用根拠さえあればいいので、契約書と請求書・領収書があればいいです。(すっげえ極論。自信ない。

 

 

稟議書についての監査って・・・会計監査です。

 

 

じゃあ、会計監査が必要になるのってどんな会社かというと、「会社法 第327条」に書いてあります。

会社法 第327条
1.次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
 1.公開会社
 2.監査役会設置会社
 3.委員会設置会社

2.取締役会設置会社委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。

3.会計監査人設置会社(委員会設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。

4.委員会設置会社は、監査役を置いてはならない。

5.委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない。

 

 

公開会社って、「株式公開」会社なわけで、上場企業が該当します。

といういわけで、上記に該当する会社は監査役を設置して、監査を請けなくてはいけませんよと。

 

 

じゃあ、監査って、具体的にどんなチェックするの、ってなると、「稟議書」が引っかかってくるのは、主に「金融商品取引法金商法)193条の2」になります。

 

193条の2を引用すると長いんで略すと

1項.財務諸表について利害関係のない公認会計士監査法人の監査を受けて証明もらえ。
2項.内部統制報告書について利害関係のない公認会計士監査法人の監査を受けて証明もらえ。
3項以降、省略! 

 

 重要なのは2項の「内部統制」です。

 

これもめっちゃ長いので超訳すると

「会社のお金や財務諸表を好き勝手にいじれないようなルール作れ!そしてそのルールがまともなのか?そのルールどおりに運用されてるか、監査受けろ!」

ってことになります。*2

 

 

ここで、監査法人がチェックして「オッケー!☆(ゝω・)vキャピ」っていうためには、それを確認できるモノが必要になるんです。

 

 

というところから、 

  • 「まともなルール」=「作ってるよ」を証明するために、色々な規定等の書類が必要。
  • 「まともかどうか」の判断は監査人(公認会計士または監査法人)に委ねられてます。法的に。
  • 「そのルールどおりに運用されてる」=運用プロセスのところどころに記録を残し証明とする。

 

となるわけで、その「記録の手段」として、多くの企業が「稟議書」を選択するわけです。

 

 

 


別に、「稟議書」っていう名目じゃなくてもいいんですよ。本来論としては。

 

ルールが明確になっていて、そのルールが「不正を起こしにくいもの」になっていて、そのルールどおりに運用されていることが後から確認できるように記録が残っていれば。

 

 

で、監査人は、内部統制の観点での監査として、業務プロセスの一部をサンプリング抽出して、明文化されたルールどおり運用してるかウォークスルーでチェックしたり、あるいは財務諸表監査の観点で、会計上の異常値を見つけた時に、どんな商取引が発生していたか、それにまつわる契約書やら稟議書やら請求書やら支払明細やらをひたすら根掘り葉掘りほじくり出したりします。

 

 

なんでこんなにめんどくさい統制が必要なの?

とくに上場企業に限って言えば、「会社が出資者の資金によって支えられている」って建前でいろんな法制度が出来上がってるから。

 


非上場オーナー企業なら、社長や共同創設者で100%資本なら、いらないんですよ。

 


「稼いだ金をどう使おうが勝手だろ?」

違うんです。

 


「その稼ぐための活動に必要な最初のお金を、出資者が出している」というところからスタートするんです。

 

 

最初の資本がなかったら、営業活動によって生み出されたお金も、そこには存在し得なかった

出資したお金が正しく使われているか?

営業活動によって生み出されたお金が、再び正しく使われているか?

 

こうしたことを、出資者に証明できなくてはならない。

しかし、出資者がすべてチェックすることは非現実的なので、金商法+監査人による監査によって、それを担保している。

 


そして、出資者は、財務諸表という経営成績表+監査証明から経営状況を判断し、経営者が信頼するに足るかを判断し、再びそのお金で会社を運転する権限をその経営者に再委託するに足るか判断するんです。

 


話が広がりすぎたかもしれませんが、そんな感じの立て付けで成り立ってるんです。(強引

 

 

 

長くなったので、本題要約。

稟議書をちゃんと残す必要がある企業≒上場企業(および上場を目指している企業)

 

上場前:会社は創業者のモノ、上場後:出資者(株主)全員のモノなので、「社長がそういったから」じゃ済まされない、全ての出資者に企業活動が正しく行われていることを証明する必要がある。

 

証明手段は、稟議書じゃなくてもいいけど、ルールの明確化、ルールの妥当性、ルール通りの運用について、監査人がチェックしてOKを出せるだけのモノが必要。

 

 

そういうことです。

 

 

誰かから教わった記憶がまるでないなぁ。

 経済学部とか経営学部とか商学部、こういうこと勉強するんだよね?大学サークル同期の会話とか思い起こす限り、商法とか必修に入ってたよね?

 


俺っち文学部卒orz


わりと勢いで書いてるし、今の自分の知識の限界がこんなところなので、補足ツッコミ歓迎です。

 

*1:上場企業じゃなくても、会社法上の規定に引っかかる企業は監査役を置いて監査を行う義務を追うことがあります。

*2:ルールがあってルール通り運用されていてもルール自体がザルだとやっぱり監査でひっかかります。