「Amazon Web Services負荷試験入門」は2つの面で良書だった
まさにT/Oなんだが
AWS負荷本、「AWSで作るシステム負荷試験のやり方」というIssueを掘り下げただけでも貴重なのだが、そもそも普通に負荷試験についてしっかり解説した書籍自体がレアなので、二重に美味しい。
— atsuizo (@atsuizo) 2017年9月25日
AWS本では珍しい「ワンテーマ」の本
世に数あるAWS本の多くは「入門として、広く浅く」か「最新(最近だとサーバレス)の特定技術であんなことも!こんなことも!」のいずれかに分類されるかと思いますが、この本は「AWS上に構築したシステムの負荷試験をどうやってやるか」という、とある1つのソリューションに特化した本ということで、これらとは一線を画しています。
特に前者については、もう出尽くし感があります。一部の本が改訂版を出していますが、既存サービスも進化しているAWSにおいて、古い情報のまま次の本が出てこないモードに入りつつあります。
技術書を書くような人は、基本的に新しいものを探求する人が多いので、画面キャプチャ取り直しという地味な作業がメインになりかねない改訂作業、新刊にしても知り尽くしている領域について執筆するという作業にたいするモチベーションの問題もあるかと思いますし、執筆企画を扱う出版社側も「目新しさ」を欠く本は企画を通しにくいです。
ワンテーマというのも、「広く遍く売りたい系」の出版社からすると、市場を自ら狭める行為なので、企画が通りにくいのではないかと思います。
「技術評論社さん、この負荷試験本の企画を通してくれてありがとう」という感じです。
ネット界隈(Twitter&ブログ等)でもとても評判がよいようで、Amazon上での売上も上々のようです。
「AWS本のこれから」にも少なからず影響する1つの事例とも考えられます。
AWSに限った話ではない「負荷試験」を語った本
そもそも、AWSということを抜きにしても、負荷試験をテーマにした本というのは少ないです。というか、システム試験についての本の一部で語られている程度のことが多いです。
若手のエンジニアや、整理された状態で学んだことがないままなんとなくやってきたエンジニアにとって、良い手引書となるでしょう。
負荷試験に対する考え方、負荷試験のアプローチといった概念、理論の話から、ApacheBench、JMeter、Locust、Tsungといった具体的なツールの扱い方まで一通り説明されているだけでなく、その試験作業の中で陥りがちなハマリどころ対処法についても言及されています。
この「ハマリどころ」というのは、負荷試験が不十分なまま使っているシステムで突然発生してエンジニアを振り回しがちな障害そのものだったりするので、開発・構築前に読んで知っておくだけでも予防効果が期待できるかと思います。
ガチンコで負荷試験に取り組んできた人だと「物足りない」という感想を持つかもしれませんが、はっきりいってこのレベルで整理された情報が圧倒的に不足していると思いますし、だからこそ好評をえているのだと思います。
物足りないと感じた人は、入口部分はこの本におまかせして、「負荷試験入門」の次のステップについての解説を、書籍とかブログとか、どこかでアウトプットしてもらえるとありがたいですね。
そんなわけで
おすすめです。
Amazon Web Services負荷試験入門―クラウドの性能の引き出し方がわかる (Software Design plusシリーズ)
- 作者: 仲川樽八,森下健
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2017/09/23
- メディア: 大型本
- この商品を含むブログを見る