ネットワークトラフィックという、古くて新しい問題。
クラウドサービスバンザイ!
ハードウェアの置き場要らないし、資産管理もほとんどいらないし。
負荷急増にもすぐ対応できるし、サーバー納品待ちとかないし。
「このロット、ハズレだなー」、とかないし。
Saasレベルののもに至っては、ほんとに「1ライセンス月いくら」しか気にしなくて良いからなー。
いいよのなかになったもんだー。
情報システムに資金を回しにくい非IT系ベンチャーにとっても、非常に嬉しい時代になりました。
そして、ふと沸き起こるトラブル
情シスがサーバーを手放して、Iaasを活用した。
情シスが開発を手放して、Paas・Saasに乗っかった。
そして残ったのは、ほんとに低層の「ネットワーク」の部分。
情シスが呼び出されるトラブルの多くが「ネットワークが繋がらない、遅い」という問題に。
そんなに複雑な構成を組んでいない、設定すべき情報もほとんどないネットワークで、トラブルが起こります。
手を加えることがなさすぎて、人為的にはトラブルを起こしにくい、そんなはずの環境で、トラブルの報告があがってきます。
人手を介して作ったプログラムならば、そのトラブルは「人が作りこんだもの」でした。
このレイヤでトラブルが起きた時、なんとなくアタリがついたものです。
今、当たり前のようにCAT6ケーブルと1GBpsスイッチングハブという汎用品ばかりで、外界との出口にルーターがあって、その先はフレッツ光につながっているだけ、という構成で、トラブルが起こるのです。
ルーターの設定も含め、ソフト・ハードともに、まったく手を加えてないときに、突然トラブルで呼び出されます。
「はぁぁ?なんかやらかした?最近何もいじってねぇぞ。」
そんな言葉を押し殺して、呼び出しに応じて現地調査へ向かう日々。
原因は・・・トラフィックの増加
クラウドサービスを使うということは、業務の一挙手一投足を「インターネット越し」にすることを意味します。
インハウスのサーバーで提供していたサービスを利用している頃なら、トラフィックは社内で収まってました。
外界よりは社内LANの方が速いわけで、ボトルネックはサーバー側かアプリケーションやミドルウェアの作りにありました。
それが、インターネット越しのサービスに委ねることで、ウイークポイントが制御不可能なところに移ってしまいました。
社内業務用システムを中心にお仕事してきたSIer出身のエンジニアや、開発部分の受託ばかり受けてきたソフトハウス出身のエンジニアでは、なかなかノウハウもってない部分ですね。
このへんは、Webサービス系でインフラ育ててた人が強いのかな。
ネットワークトラフィック増加の極めつけ!オンラインストレージサービスの同期機能
クラウドサービスでも特に隆盛しているのが、Dropboxに代表されるオンラインストレージ。
一様にWeb-UIを持っているけど、WindowsのエクスプローラやMacのFinderと統合するSyncアプリケーションもウリにしている事が多いです。
サーバー側と同じ情報が定期的にローカルに同期され、ネットワークが繋がらない場所でもファイルを参照できるって、ものすごい便利。
Dropbox、OneDrive、GoogleDrive、box、etc...みんな、当たり前のように同期アプリを提供してます。
これ、個人利用だとわからないけど、会社で利用すると、こいつがかなりの曲者。
例えば。。。
とあるフォルダを、同じオフィスで働く部員20人全員がアクセスできるようにしていたとします。
そこに、1人が、同期フォルダに5MBくらいのファイル(例えば部署の飲み会の写真とか)を置きます。
すると、同期処理で5MB分のアップロードが発生します。
その後、そのフォルダへのアクセス権を持っている他の19人のクライアントが、そのアップされたファイルを、「ダウンロード対象」として検知します。
そして、5MBの上りトラフィックは、19倍、ほぼ100MBのダウンロードトラフィックとして帰ってきます。
同じような写真ファイルをたった10個共有するだけ1GBですよ。。。
さて、インターネットのスピードってどんなもんだっけ?
わかりやすくフレッツ光の家庭用でいうと、従来のフレッツ光で100Mbps、フレッツ光ネクストハイスピードで200Mbps、最速サービスで1Gbps(西は「隼」で開始済、東は8月から)。
光回線の契約1本の理論値で下り100Mbps基準で計算すると
1GigaByte=100Mega bit*10*8 / 秒
ですよ。
理論値上限に対して80秒分。
実際には100Mbpsサービスの実行速度は5分の1から10分の1、10〜20Mbpsがいいとこですから、さらに5〜10倍の時間、400〜800秒をそのファイルのダウンロードだけで帯域使い切るわけで。
そりゃ、他の業務が回らなくなるくらい体感速度が遅くなり、当然の如く情シスが呼び出され、事情もわからず原因を作った人から罵声を浴びるわけです。
そういうのを回避するために、Syncアプリ禁止にしている会社もありますね。
boxを提案しにきた営業も、自分の会社はsync使えない、って言ってました。
でも、ITリテラシ低めの非IT系中小企業のユーザーが、それまで使い慣れたWindowsのエクスプローラ手放してすべてWeb-UIでやれって言われたら、さすがに辛いと思うのですよ。
今後、ベンチャーの情シスが取るべき方策は
足回り(ネットワーク)の強化。これでしょう。
ハードの投資や運用保守ノウハウにかける労力が軽減された分、ネットワーク強化に費やすべきでしょう。
もちろん、トラフィックが膨張しにくいサービスの選択、機能制限なども検討することになると思います。
ただし、ユーザビリティを落とさない、作業能率を下げないことを考えたら、ネットワーク増強は避けられないと思います。
回線を増やすとか、ベストエフォートから帯域保証型にするとか、ニーズとコストのバランスをとって最適な環境を作るために学ばなきゃいけないことがたくさん。
そして、結構投資コストがかさみ、かつ、簡単に辞めにくい領域でありながら、導入効果が予測しにくい領域でもあります。
それでも、稼ぎを生み出すスタッフみんなが気持ちよく働ける環境を提供し続けるために。
そんなわけで、ネットワーク周りのノウハウをもっと欲しいです。
個人的には、家庭用に毛が生えた程度の貧弱ネットワークか、遅延と断絶の許されない金融系コールセンターにCISCOのスイッチをぶっこみまくった超富豪的LANの知識しか持ち合わせてないもんで、その中間と外部ネットワークの強化ノウハウがまるっと欠けてるんです。
ネットワークって、もう業界的には枯れた商材になってて、ベンダーサイトを見ても、ハイエンド機、データセンター/クラウドインフラ向けくらいしか情報がなくて、ユーザー企業のオフィスインフラ用途ってほとんど話題にならないね。
売る側としても、特徴出しにくて売りにくいから、流行りものに乗っかってるんだろうけど。
書籍をあたれば、めっちゃ基礎の話と、プロトコルの話ばかりで、構築ノウハウやトラブル対応のノウハウって殆ど無いし。
情報あつめにくくて大変。
つまりこれ、ビジネスチャンスですよー、っと。